「軽度の眼瞼下垂でも保険が適用されますか?」
日々眼瞼下垂の診療をしているとこの質問をされることが多い。
何故だろう?私は不思議でならない。
だって、風邪をひいて内科を受診した際、内科医に「軽度の風邪だけど保険で薬を処方してもらえますか?」と聞く患者様は基本的にいないと思う。
でも、眼瞼下垂症治療の場合はそうならない。このようになってしまう要因は治療をする側にもあるのだが、治療を受ける側にもある。
美容外科など売上を重視する医院では保険適用の治療よりも自由診療の治療を増やしたいと考える。結果として眼瞼下垂が軽いから保険では適用できないという訳の分からないことを患者様に伝える。内科医や外科医などは軽い風邪だから、或いは軽い胃炎だから保険適用にはならないとは絶対に言わない。
しかし、より深刻な問題もある。
それは目を開いている時に正常に見えてしまう眼瞼下垂症(代償期)の患者様の診断が正確にできないということにある。正常に目が開いている様に見えていても眼瞼下垂症の患者様は大勢いらっしゃる。でも、見た目が正常であれば問題がないと判断してしまう。
眼瞼下垂症というのはまぶたの動きに問題がある状態なので、まぶたが動いていない状態では何も診断できない。動きを診て(見て)はじめて診断がつく。
それとは別に、治療を受ける側にも問題はある。
眼瞼下垂の治療をするとどうしても目つきが変わってしまうことがある。一重の人が二重になってしまったり、二重の太さが変わってしまったりする。願わくば自分のイメージにある二重を手に入れたいと思うのは人の常。そして、願わくば治療費は安く(保険診療として)済ませたいと思う。だから保険で適用してもらえますか?となってしまう。
もちろん眼瞼下垂は軽くても重くても保険診療で治療を受けることは可能です。それこそ目の開きが正常に見える眼瞼下垂代償期の患者様であっても保険適用で治療を受けることはできます。本来保険診療を行なっている病院では全国一律同様でなければならない。でも残念ながら眼瞼下垂の診断がその医師個人に委ねられているため、どうしても一律にはならない。
保険適用で治療を受ける場合、二重幅や目の開き具合は全て医師の判断で決められる。目の開きが楽にできる様、そして術後できるだけ左右が揃うように医師が経験を元に判断して切開するラインを決める。それで良いと思う。
外科の手術でもお腹などを切るラインは医師が決める。患者様がここをこの様に切って下さいと医師に要望することは基本的にはないと思う。医師が総合的に判断して一番良いと思う位置で手術をする。
そんなものだと思う。
でも、一つ朗報?がある。
正常に目が開いている様に見える眼瞼下垂症(代償期)の患者様も大勢いる。
今まで眼瞼下垂ではないと眼科でも形成外科でも否定されてきた方も眼瞼下垂症に精通している医師が診断をすると実は眼瞼下垂の代償期と診断されるかもしれない。その場合は保険適用で眼瞼下垂の手術を受けることはできる。
病気でないことが一番良いことに変わりはないが、眼瞼下垂ではないと診断されたけれども症状がどうしても気になる方は一度当院など眼瞼下垂に精通していると思われる医療機関を受診してみてはどうだろうか?
正常に目を開くことができても眼瞼下垂(病気)がみとめられた場合は保険適用で治療を受けることはできる。一考の余地があるのではないだろうか?